『ぼくの名前はラワン』概要
| 原題 | Name Me Lawand |
| 製作年 | 2022 |
| 製作国 | イギリス |
| 監督 | エドワード・ラブレース |
| 時間 | 90分 |
| 配給 | スターキャットアルバトロス・フィルム |
難民としてイギリスに渡った、ろう者でありクルド人の少年ラワンの成長を追ったドキュメンタリー。
イラクで居場所のなかった息子のために両親は国を離れる決意をし、難民キャンプを経てどうにかイギリスのダービーにたどり着く。ラワンはダービー王立ろう学校に通えることになり、少しずつイギリス手話と口話を学び始める。イラクでは対等に扱われないこともあり両親はラワンに口話を使ってほしいと思っていたが、ラワン自身は手話を自らの言語として使いこなしていく。両親の理解のなさにラワンは苛立ちつつ、やがて内務省による難民認定の審査が始まり…といった話である。
『ぼくの名前はラワン』予告編
この映画で知ることができること
- ろう者への理解のない地でのろう者の生きづらさ
- 難民の苦難の一端
- 一人の少年が言語を獲得し、彼の世界が一気に広がる様
- ドキュメンタリー映画でも視覚的な創造性を発揮できること
この映画の社会背景
クルド人は国家を持たない民族であり、クルディスタンは地理的にトルコ、イラン、イラク、シリアの四カ国に分断されている。自治政府を持っており、政治的に自立している地域である。歴史的に弾圧や流浪を強いられてきた過去があり、難民流出も多かった。ラワンが国を出るようになった背景にも、こういった情勢が影響している。
イギリスのダービー王立ろう学校でラワンはイギリス手話を学ぶことができた。イギリスのろうコミュニティは強固であり、芸術分野にもろう者が進出し、活躍できる環境が整ってる。しかしながら社会基盤が整った国はまだ少ないという。
イギリスでは(日本も)かつては口話法が主流で手話を禁じ読心術や発声を強いられてきた歴史がある。しかしそれはろう児のことばを奪う結果となっていた。イギリスでは広く手話やろう文化が認められているのだが日本では手話を中心に教える学校はいまだに少なくいのだという。
参考文献:「ぼくの名前はラワン」パンフレット
『ぼくの名前はラワン』の感想
すばらしいドキュメンタリーであった。
イラクでのろう者への無理解から「僕はいつもよそ者みたいな気がしてたんだ」と語っていた少年ラワンが、居場所を見出す物語である。
難民としてイギリスにわたり、ダービー王立ろう学校にて手話を習得したことでラワンは大きく自分の世界を広げていく。それまで自らの「言語」を持てていなかったが、自らの言語を手に入れたことでアイデンティティも獲得し、親友と呼べる仲間と出会い、「僕にとって言葉は自由を意味するんだ」とまで語る。困難を乗り越えて成長してまわりにも影響を与えていく様には心震えた次第である。
ラブレース監督がラワンの存在を知り、彼のコミュニケーションを求め前に進もうとする姿に心打たれ、クルド人やろう者のプロデューサーと撮影チームを組んで4年にわたり撮影したのが本作である。その中で監督自身も手話を習得し、ラワンと直にコミュニケーションを取れるようにしたそうな。監督の熱意が伝わる作品である。
またこの映画の特筆すべき点として、映像の視覚的豊かさがドキュメンタリーばなれしている点もある。ここらへんは監督自身の強いこだわりがあるという(以下のサイトのインタビューにて詳しく語られている)。

言語って、ただの意思疎通の手段じゃないんだという力強いメッセージを感じた…!
ちなみに撮影監督は『愛はステロイド』のベン・フォーデスマン!
そんなわけで大変おすすめなドキュメンタリー映画であった。



