『クイーンダム 誕生』を観た!【ロシアのクィアパフォーマーの無言の抵抗】

ドキュメンタリー映画『クイーンダム 誕生』のあらすじと感想

はじめに

ドキュメンタリー映画『クイーンダム 誕生』を観てきたので紹介したい。

筆者
筆者

強烈なビジュアルが鮮烈!それでいていままさに戦争をする国の若者の苦悩も描かれているゾ!

『クイーンダム 誕生』概要

原題Queendom
製作年2023
製作国フランス、アメリカ
監督アグニア・ガルダノバ
時間91分
配給Elles Films

LGBTQへの弾圧が強いロシアに突如現れた21歳のクィアパフォーマー、ジェナ・マービンを追ったドキュメンタリー。唯一の家族である祖父母からの愛情と不理解、幾度も続く衝突や、アート活動を受けての学校からの除籍、モスクワでの反戦デモへの参加による逮捕、徴兵の危機における苦悩と選択が描かれていく。

この映画で知ることができること

  • LGBTQ+への弾圧の強い国で苦悩する当事者の現状と想い
  • ロシアという国で反戦を示すということ
  • 徴兵制のある国で生きる若者がさらされる現実
  • 「ジェナ・マービン」という孤高のクィア・パフォーマーの存在

この映画の社会背景

2022年2月24日から続くロシアによるウクライナ侵攻は今も続いている。この映画はその少し前から撮影が開始されている。

モスクワから1万キロほども離れた極寒の田舎町マガダンで祖父母に育てられたジェナは幼い頃から自身がクィア(ノンバイナリー)であることを認識しており、保守的な町においてときに歩くだけで暴力や差別にさらされてきた。

その痛みやトラウマを自らの長身痩躯な身体をフルに活かしたアートへと昇華させ、「監獄」であるロシアの外へSNSを通して波及させていく。

そんなさなかのウクライナ侵攻と反戦デモへの参加による逮捕、徴兵の危機からの亡命、そして今へ至る過程で彼女の活動にふれることができる作品である。

『クイーンダム 誕生』の感想

度々挿入される現実離れしたジェナのパーフォーマンス映像における彼女の存在感にはひたすら圧倒された(特に泥の中のパフォーマンスがすごい…!)。

そんな孤高のパフォーマーを生み出した環境はといえば、極寒の田舎町であり、そこではジェナがいわゆる「普通の格好」で歩いているだけでもLGBTQ+に理解のない罵詈雑言が飛んでくることすらあった。彼女の唯一の肉親である祖父母もまた家族として当然の愛情は持ちつつも、大いなる無理解がありもどかしかった。

筆者
筆者

おじいちゃんおばあちゃんも、ジェナが理解できないながらも孫を想う愛情ゆえに毎度説教しちゃう感じ、わからなくはないんだよな〜仕方ないんだろうけど前時代的で…価値観の断絶に哀しさがあったよ

(それにしても「仕事がないなら軍で仕事をもらえ」となってしまうのが戦争中で徴兵制がある国の実情だと突きつけられるのが、他人事ではない今日このごろ…暴走する与党による日本国憲法の余計な改悪はあってはならないと痛感する)

しかし「ジェナ」として奇抜すぎる衣装に身を包み街に出れば「自分は無敵だ」と彼女は力強く語る。そしてまだ二十歳そこそこの若者でもあり、将来への不安や自己との葛藤も大いに持ち合わせている。

LGBTQ+の活動を禁止する法律と政治、社会に抗議やウクライナ侵攻への反対デモのために街中へ繰り出す無言のパフォーマンスには心ざわつくものがあり目が離せなかった。ときには逮捕されてしまうほど、現在のロシアにおいては表現すら命がけの行動なのだ。

しかしジェナがくじければ「マッチョ」な世界観で男として兵役につき、そのうち祖父母の安心する職に無難につくという「監獄」にいるしかなくなってしまう。

祖国を離れる決意というのは、普通に暮らしている市民の視点で想像すると相当な決意によるものだと思わずにはいられない。自分らしく暮らすためには、ともすればそういった決意までも必要な場所があるのだと、現実の哀しさを突きつけられる作品であった。

ちなみに2026年1月末の映画公開にあわせてプロデューサーと共に来日もしている模様↓

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