『1923 Kanto Massacre』を観た!【「歴史の闇」を「継承すべき記憶」へ】

ドキュメンタリー映画『1923』の紹介と感想

はじめに

ドキュメンタリー映画『1923』を観てきたので紹介したい。

関東大震災の影に隠された見つめ直すべき自国の史実に触れることができる作品である。今こそ観てほしい作品だ。

『1923』の概要

原題1923 Kanto Massacre
製作年2024
製作国韓国
監督キム・テヨン、チェ・ギュソク
時間116分
配給sumomo

1923年の関東大震災の際に関東全域で起きてしまった朝鮮人大虐殺をひもとくドキュメンタリー映画。韓国のキム・テヨン監督とチェ・ギュソク監督の共同監督による。

日韓近代史関連の写真蒐集家のチョン・ソンギル氏が所有していたある写真の存在を知ったキム・テヨン監督が、この悲劇をひもとくべく膨大な取材と新資料の検証を通じて真実に迫っていく。

この映画で知ることができること

  • 1923年の関東大震災発生時に日本人が起こしてしまった関東大虐殺の史実
  • 虐殺による朝鮮人の犠牲者総数は6661名とされている
  • 政府が101年にわたりそのことを隠蔽してきたこと
  • それらの背景にある差別意識、権力構造、歴史認識の問題
  • 被害者の遺族や、日本の市民活動化、研究者など真実を明らかにすべく行動する人たちの声
  • 「歴史を忘れた民族には未来はない」ということ

この映画の社会背景

日露戦争を経て日本に併合されてしまった韓国の国民は、植民地化された母国での生活に困窮し大勢が中国や帝政ロシア・ソ連、そして日本へと流れ込むことになった。強制連行された人を含めると1923年には8万人ほどが日本へと来ていたという。そういった背景で1923年の9月1日に関東大震災が発生してしまう。その中で政府主導のデマによる扇動の結果、自警団を始めとした市民が朝鮮人大虐殺という凶行に及んでしまったのである。

『1923』は韓国の二人の監督により作られているが、そのような負の歴史に対して「糾弾・告発」という部分を全面に出すものではなく、あくまでも事実を丹念に追求していく作品となっている。

遺族や真実を追う市民団体、研究者、政治家の方たち(鳩山元首相や有田芳生氏、櫛渕万里氏など)のインタビューや研究所に眠る資料の精査により、当時の政府がどのようにデマを流し、そしてどう自警団に責任を転嫁したのかそれらが明らかになっていくつくりになっている。

一方で今なお、そうした事実を追求しようとしたときに日本政府が返す返事といえば「関連資料が見当たらない」「あったとしても真偽の程が明確でない」、なんなら日本の当時の司法が行った裁判書類さえ「事実しては認定できない」という心無い対応である。

しかしながら1923年当時、虐殺の中心地でもあった東京や横浜には数万人の外国人が来日しており虐殺を目撃していたのである。この映画ではその西洋人たちの証言、新聞報道、各国大使館や領事館の記録などが初めて公開される。これらの記録までは日本政府も隠し通せなかったのである。

感想

冒頭からあまりのことに涙無しには観られなかった。

自国民の持ち合わせてしまった残虐さや、それを政府が隠してきたということへの憤りや失望、なにより失われた命の無念さを改めて突きつけられることへの悔しさや申し訳無さがとめどなく込み上げてきたのだ。

筆者としては映画『福田村事件』とそのもとになったノンフィクション本ではじめてこの虐殺の史実にまともに触れたのだが、改めてこの未曾有の悲劇が関東全域で多発していたことを考えるとひたすらに辛いものがあった。それを主導した当時の政府、そして今なお歴史を歪めようとし続けている現日本政府や差別的な団体には強い憤りを覚える。

関東大震災の後に治安維持法を実施し日本が軍国主義へと向かってしまったわけだが、恐ろしいことに2026年3月時点の日本にて同じような歴史の転換点にいるようでなんとも暗澹たる気持ちである。

映画の終盤、「歴史を忘れた民族には未来はない」という言葉がでてくる。

隠蔽され続け捻じ曲げられさえする自国の加虐の史実を見つめ直さなくては、差別や排除の構造を変えることは難しいのだと痛感するばかりである。

阿佐ヶ谷Morcでの上映後に監督らのトークショーも聞くことができた。左から、この日通訳をされていた本作のクリエイティブプロデューサーのファン・ヨンスンさん、キム・テヨン監督、チェ・ギュソク監督。
韓国でのパンフレットがなんと配布された!もちろんハングルではあるのだが対訳のプリントも用意されていた。うれしい。さらにはクランクインから完成後の歩みをまとめた冊子もいただいてしまった(監督自ら配布していた…!)。
そしてまさかのアクスタまでもらってしまった。ポスタービジュアルや映画終盤でも映し出される印象的な紙の人形のアクスタである。

おわりに

そんなわけで『1923』、魂のこもったドキュメンタリー映画である。

ぜひ多くの人に触れていただき、日本の歴史の一端を知るきっかけにしてほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です