『よき谷の物語』の概要
| 原題/英題 | Historias del buen valle / Good Valley Stories |
| 製作年 | 2025 |
| 製作国 | 日本 |
| 監督 | ホセ・ルイス・ゲリン |
| 時間 | 122分 |
| 配給 | コピアポア・フィルム |
バルセロナ郊外にある“陸の孤島”バルボナ(よき谷)は川や線路に囲まれ、開発から取り残された都会のオアシスのよう。20世紀に住み着いた移民や新世代の移民を交え、様々な人が暮らす地でもある。そんな地で暮らす人々とその地を3年間取り続けたドキュメンタリー。
スペインの名匠ホセ・ルイス・ゲリンの10年ぶりとなる長編監督作。
『よき谷の物語』の予告編
この映画で知ることができること
- 大都市バルセロナ郊外に切り離されたように存在する自然豊かな集落・バルボナとそこで暮らす人々の営み
- バルボナにはインド、ジャマイカ、ロシア、ウクライナなど世界中から集まってきた人々が暮らしている
- 2029年完成予定の線路の開発の影響で、一部の住人が立ち退きを要求されている
この映画の背景
- バルボナとはカタルーニャ語で「よき谷(=Good Valley)」を意味する
- バルボナの人口は1500人ほど
- 監督はこの作品に取り掛かる前に、バルセロナ現代美術館から短編を依頼されてバルボナを訪れバルボナに魅了された
- 冒頭、この映画についてのオーディションの様子も収録されており、主要な登場人物がこの地のことを思いおもいに語っている
『よき谷の物語』の感想
バルボナはなんとも不思議な集落である。大都会のそばにありながら、開発から取り残され自然が多く残る。そんな美しい土地に、本当に様々なルーツを持つ人々が混在しており、ともに飲み食い歌い踊る。そして時にはウクライナ侵攻を始めたばかりのロシアから来た親子が肩身を狭くし、ムスリムの少女は学校でいじめられる弟を心配する。理想郷のようでいて、やはり世界の縮図的な側面もある。

筆者
アパートのベランダにパレスチナ国旗がいくつか掲げられていたのも印象的だったな。連帯の証か、パレスチナから逃れてきた方がいたのかな。
ドキュメンタリーでありながら、どことなくフィクションを撮影しているかのような、編集におかしみがあるのが印象的でもあった。
認知症の夫を慈しむ老女が一緒に家でピアノを弾き、踊り、抱き合うほっこりシーンの直後に、階下の住人が「なにやらうるせーんだが」みたいな表情で困惑をしていたりする。つなぎ方に遊び心がみられるし、どんな段取りで撮影したのか気になる次第である(編集の妙味が楽しめる極めつけは憩いの場となっている水辺のラストシーンなので是非映画館で楽しんでいただきたい…!)。
そんなこんなでゲリン監督のバルボナに対する敬愛に満ちた眼差しを感じるすばらしい映画であった。

