『気高く、我が道を』を観た!【孤高のアーティスト】

アラシュ・エスハギ監督作品『気高く、我が道を』の感想

『気高く、我が道を』の概要

原題/英題Gracefully
製作年2019
製作国イラン
監督アラシュ・エスハギ
時間62分
配給Venera Films

イランにて、乳牛を飼い、田植えをして暮らす80歳の男性は若き日から女装をして踊るダンサーとして活動してきた。革命にて踊りを禁止されているいまも踊る喜びを求め続ける様を追ったドキュメンタリー。

『気高く、我が道を』の予告編

この映画で知ることができること

  • 革命後のイランにおける国民への抑圧と、そこで静かに闘うアーティストの生き様

この映画の背景

  • 1979年に起きたイラン革命により、親米派で近代化路線を進めていた国王の独裁体制を倒しイスラム教の指導者を中心にしたイスラム共和国を樹立した
  • イランにおいて女性の踊りは極めて不適切であり不謹慎であると見なされており、女性は人前で姿をさらすことを許されていない
  • そのため演劇やダンスにおける女性の役は、すべて男性の役者が女装(女形)して演じるという伝統が自然発生的に定着していた
  • 革命後、服装の規定や酒の禁止などが法制化しエンターテインメントも禁じられ、男性が踊ることさえも禁じられた

『気高く、我が道を』の感想

シネマリスの山ドキュ定期便作品ということで鑑賞してきた。

まさに邦題のとおり、「気高く我が道を」行くアーティストの人生を追った作品である。また人が『楽しみ』を求め続ける存在であるということも強烈に映し出していた。

筆者
筆者

国からの抑圧が生む歪みのようなものも感じずにはいられなかったな〜

主人公となるアミール氏は若き日は踊りを生業としていた。80歳での彼の生活はといえば乳牛を飼い、稲作をして暮らす農業従事者だ。革命後、人前では踊れなくなってしまったためである。家で踊る以外には慰問で訪れた病院や、結婚式などの私的な空間でのみ人前で踊ることができている。

今でも自ら布を買い求めてきらびやかで精巧な衣装をこしらえる。数百もの衣装がコレクションされているのだ。衣装はそれぞれ踊るジャンルによって分かれているようで、彼がいかに踊りに情熱を注いできたのかという凄みが見て取れた。

アミール氏の家族との関係は深い愛情に結ばれつつも、国の体制が故にキズを抱えた複雑な物となっているようだった。60歳となる妻は、今の体制でもなお女装して踊りつづける夫との生活に諦めのようなものとともに不満もあるようだ。一方息子たちは父の芸術家としての生き様を誇りとしていた。息子のひとりは、かつて父のダンスの伴走で打楽器を叩いていたが、ある日警察による自宅ガサ入れがあり、指を激しく損傷させられてしまい演奏を断念する憂き目にあっている。

象徴的なシーンとして、夜の闇の中アミール氏がひとり衣装をまとい踊るシーンがたびたび出てくる。これは単なる趣味などではなく、あらゆるリスクと隣合せでありながらも人間の尊厳をかけた闘いだったのだと感じずにはいられなかった。

筆者
筆者

シネマリスでは本編のあとに監督のオンラインインタビューの様子も併映されたのだが、アミールさんは自分がずっと置かれ続けていた孤独な状況をコロナ禍の人と会えない状況に重ねていたそうだ

ちなみにラストのダンスシーンで途中から男性がひとり加わるのだが、それはエスハギ監督だそうな。

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