『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』を観た!【2023年10月以前のパレスチナ】

ドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の感想

ヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタがイスラエル軍とユダヤ人入植者により襲撃されてきた様を4年にわたり記録し続けた作品である。パレスチナ人2名とイスラエル人2名の共同監督で作られた。第97回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受をはじめとし、映画賞を多数受賞している。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の概要

原題No Other Land
製作年2024
製作国ノルウェー、パレスチナ
監督バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショール
時間95分
配給トランスフォーマー

パレスチナのマサーフェル・ヤッタで生まれ育った活動家のバーセル・アドラーは破壊行為と占領の実態をカメラに収め世界に発信してきた。彼に協力しようとその地にやってきた同い年のイスラエル人青年ユヴァル・アブラハームはバーセルとともにその活動を記録していく。彼ら含む4名の映像作家・活動家により、「抑圧する側とされる側ではなく本当の平等の中で生きる道を問いかけたい」という意志のもと危険を顧みず製作された作品である。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の予告編

この映画で知ることができること

  • 2023年10月7日以前の、ヨルダン川西岸地区がおかれている悲惨な人権侵害の状況
  • 占領の実態、アパルトヘイトの実情、それらを放置している国際社会の怠慢
  • マサーフェル・ヤッタで暮らしてきた人々の想い

この映画のおおまかな社会背景

土地を巡る対立のおおまかな歴史

土地の所有権と居住権を巡る主張の対立は1948年のイスラエル建国から続いており、さらに遡れば19世紀末のシオニズム運動の始まりや欧米社会でのユダヤ人差別に端を発する。

1967年の第三次中東戦争でイスラエルがガザ地区とヨルダン川西岸地区を軍事的に制圧。以来この二つの地域はイスラエルの占領下にある。

2005年にイスラエルは撤退し、しかしその周囲の陸と海を封鎖し人と物の出入りを厳しく制限し実勢つ占領状態を続けた。ガザは貧困・人口爆発・環境悪化が進行。このような流れがガザを支配するハマス蜂起の背景にある。そしてヨルダン川西岸地区も占領下に置かれてきた。

パレスチナ自治区の地図を見ただけではわからないが、大まかに3段階に自治の状況が分かれている。「行政」と「治安維持権限」がともにパレスチナにある地区は点在するばかりで実は18%ほどしかない。ほとんどイスラエル側に支配されている状況である。『ノー・アザー・ランド』では行政も治安維持権限もイスラエル側に完全に支配下に置かれているマサーフェル・ヤッタが舞台となっている。イスラエル軍は射撃訓練所にするという名目でこの土地を奪おうとしていた。

映画の評価と評価を取り巻く論争

2024年のベルリン国際映画祭では観客から大いに支持を受け最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞をW受賞している。またイスラエル擁護を強固にするベルリン市長やドイツ文化省による受賞への批判コメントが発表され大きな物議を醸した(出席大臣の拍手はイスラエル人のユヴァルにのみ向けられたものだ、との旨のコメントであった…)。監督らが殺害予告や脅迫を受け、身の危険にさらされるほど論争(という名のイスラエル側の不条理の押しつけ)は激化している。

しかしその後に数多くの映画賞で賞を受賞し、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞も受賞した。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』の感想

これを観るまで実態をよく知らずにいたのだが、信じ難い非情な行いがつづくパレスチナの状況にひたすら辛いものがあった。

イスラエル軍はそこで暮らしてきた人たちの土地を軍用地として無理やり押収し「違法だ」と言い張って無闇に人が住んでいる家を取り壊し、子どもたちが学んでいたその学校を取り壊し、井戸にセメントを流し込み、水道すらも破壊する。そこに人がいるのに、である。

とんでもない無法な行いが連日繰り広げられ、時には人の命すら危機にさらされる。こんな人権の蹂躙がまかり通って言い訳がない。イスラエルと関係の強い国も含め、この問題から逃げずにいち早くこの虐殺を止める動きをしてほしい。

パレスチナ人とイスラエル人の友情で出来上がった作品だ、ということが一縷の希望となる映画であった。

筆者
筆者

とにかくまず起きていることを知ってほしい

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